曲目解説

グレゴリオ聖歌よりミサ曲第3番
 みなさんは「グレゴリオ聖歌」というものをご存知でしょうか。グレゴリオ聖歌とは、ローマ・カトリック教
会において、伝統的に歌い継がれている典礼聖歌です。私的な祈りでなく共同体の礼拝である典礼は、本来この
ような歌によるものであり、教会での祈る声だったのです。しかしグレゴリオ聖歌は、カトリック教のみならず、
信仰の有無にかかわりなく深い感動を覚えることができるのです。それはもはや時代や地域を越えて、すべての
人々が共有できる普遍的な音楽と言えるでしょう。
 このグレゴリオ聖歌を、我々は正しい発音や整った発声による歌唱だけにとどまらず、「祈りの声」として、
会場に響き渡らせたいとおもいます。

MISSA BREVIS in D
 英国の現代作曲家、ベンジャミン・ブリテン(1913〜1976)によるミサブレヴィス(短いミサという
意味)は、副題にあるように“少年の声とオルガンのため”に書かれ、全楽章に亘って旋律、和声、リズム感に
溢れ、声とオルガンの対比も興味深い。
 譜面上は変拍子、臨時記号、不協和音の連続で奇異にさえ感じられる部分も全パートが鳴ると、緊張感のある
優美さに変わっていく。
 ボーイソプラノの声の清らかさと、オルガンの荘厳さを、女声とピアノでどこまで表現できるか演奏する側の
楽しみでもある。

MISSA BREVIS in C K.259
 昨年は没後200年ということで、音楽界の話題を独占した感のあるモーツァルト。
 我がユースホステル合唱団も、遅ればせながら、初めてモーツァルトに挑戦しました。それがこのミサです。
 「主よあわれみたまえ」で始まり「われらの平安を与えたまえ」で終わるこのミサを歌っていると、クリスチ
ャンではない我々団員でさえ、何やら敬虔な気持になってきます。さすがは天才モーツァルトと言うべきでしょ
うか。音楽のもつ力の偉大さを感じると同時に、怖さをも感じさせられます。
 ともあれ、我々ユースホステル合唱団の歌うミサ曲をお聴きになって、キリスト教世界の一端でも感じていた
だければ幸いです。

めざめた薔薇
 詩人、塔和子が閉ざされた社会に入ったのは、昭和19年15才の時である。ハンセン氏病は未だ不治の病と
して恐れられた時代であった。前途への失意のどん底の中で、なお自分をみつめ、揺れる心の動きを詩に見い出
し始めた。
 柳川直則は、その透明で新鮮な感性に出会った時、「静かにひらいてゆく花びらが音になってゆく」ような気
持でこの曲を作曲したという。
 この楚々とした優しさと熱い思いをどう表現するかが、歌う私たちへの課題でしょうか。

五つの願い
 「62のソネット」「ことばあそびうた」で有名な谷川俊太郎さんがあの「鉄腕アトム」の作詞者であること
を、この解説を書くことになって初めて知り、驚きました。
 哲学者の父とピアニストの母の間に生まれた彼は、18才で詩らしきものを書き始め翌年には三好達治の目に
とまり文壇に発表され、21才のときには第1詩集「ニ十億光年の孤独」が刊行されました。 
 「僕は何の理想も先入観もなくすなおに即物的に詩を知っていた……僕は自転車に乗るように、ピンポンをす
るように、詩を書いていた。」と、彼のエッセイにある自然さそのままに、優しいそして軽やかなリズム感のあ
る詩であると思います。
 その言葉のリズムと間をそのままメロディーにしたこの曲は、初めは大変でも、歌えるようになる頃には何を
していても、つい口ずさんでしまうようになるものです。

West Side Story
 1975年ブロードウェイで誕生し後に映画化されたこの作品は当時のアメリカの人種偏見、青少年犯罪など
の社会問題を背景に現代のロミオとジュリエットの悲劇を描いたミュージカルである。音楽、ダンス、物語のこ
れまでに類を見ない完全な一体化は後世の作品に多大な影響を与えた。
 今回のメドレーはラブソングが中心で、全体に明るい雰囲気となっている。主人公、トニーとマリアが愛を確
かめあうデュエット“Tonight” 互いに相手を想い、恋の喜びを歌い上げる“Maria, I Feel Pretty”恋人達が
結婚式を夢見て歌う“One Hand,One Heart”そしてプエルトリコ系移民のシャーク団がアメリカを風刺する陽気
な曲“America”。

地蔵礼讃
 いつのときからか村の片すみにひっそりと立っていた地蔵。人々の祈りを一身にうけていたかつての輝きを語
る術もなく、今はただのまあるい石になってしまった。
 そして、やがては土に帰すであろう……。
 ときの移ろいとともに、ものみな総て変わり行くなかで、祈りの心だけは永遠に生き続けてほしいと願いなが
ら、創作に五年もの歳月をかけたこの作品は作者自身が刻んだ永遠の地蔵であろうか。



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