今回の演奏会は全部で七ステージ、合唱団とピアニストは入れ替わりますが、私
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だけは……出ずっぱり。聴き続けるのも大変だと思うのですが、私にとっても初体 |
験、はたして最後まで緊張感を維持できるのか、ふと不安に思ったりもしています。 |
普段から音楽をつくることは肉体労働と皆に言い続けては来ましたが、今回そのこ |
との意味を、身をもって体験することになりそうです。しかも演奏中は心を空しく |
して肉体だけが機能すれば良い、と言う訳ではありません。熱い魂と冷静な判断力 |
とを持ち、肉体と精神の調和を保ち続けなければ良い演奏はできないのです。七ス |
テージの間その状態を保つことを考えると、気が遠くなりそうです。 |
ところがこの大変な演奏会を企画したのが誰かと言うと、これがまたかく言う私 |
なのです。大変だ大変だと口では言いながら、心の中ではその大変さを密かに楽し |
んでいるのです。聴きに来て下さる方には申し訳ありませんが、何と言っても、普 |
段の演奏会の二回分が一日で出来てしまうのですから。楽しみもまたいつもの二倍 |
と言うわけです。 |
私のわがままに付き合ってくれる合唱団とスタッフに支えられて、この演奏会で |
一番楽しい思いをするのは、実は私ということになりそうです。演奏中の高揚感が |
高ければ高いほどその後に襲ってくる喪失感もまた激しいこともわかっているので |
すが、演奏しないではいられないのが音楽家の性。とにかく今は演奏会に備えて体 |
力づくり、体操でもしにいってきましょう………! |
田中 明
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