曲目解説
『 MISSA op.63 』
ラバネッロ・オレステ(1871〜1938)は、サン・マルコ大聖堂の主席オルガニスト、聖歌隊長として、
また、ソリストとしてもイタリアの伝統的教会音楽の復興に力を尽くした人です。
このミサ曲は、田中先生の知人がイタリアから持ち帰られた楽譜によるものです。これからも、ぶどうの会の
メンバーによって歌いつがれていってほしい曲のひとつです。
女声合唱組曲『遥かな歩み』
今日を昨日より、明日を今日より美しく生きたいと誰もが思う。あわただしい時代(とき)の中でその流行(は
やり)に合った、一瞬の美しさを身にまとうことはたやすい。けれども、それは脆く、いつの間にか消えてなく
なってしまう美しさである。
昔の人は━祖母は、母は、美しく結った髪にふさわしい櫛をさして喜びを感じた。自然の厳しいおきてに従う
苦しさの中に、けっして崩れることのない美を見いだした。
今、私達は、静かな夜を彩る星の下で、機を織る織女の歌をきくことがあるだろうか。道に咲く花々のささや
きに耳をすますことがあるだろうか。褪せることのない本当の美しさを求め続けること━それは、人々の永遠の
願いであり、課題なのである。
『四つの小品』
物欲と公害汚染でここまで来てしまった一つの時代を葬り、季節が移り変わるように新しい時代を迎えたい。
冬のような暗い時代の中に“春の兆し”を感じとり、自ら行動に移りたい。そんな願いが込められた三篇。「冬
枯れ」「枯れ草の春は」「小さな川」。
13歳から不治の病と闘い続け、21歳で夭逝した詩人の“死の中に新生を見つけた感受性”の極致をあらわ
した「秋風」。
これらの詩の美しい響きが萩原氏の手で抒情性あふれた作品となった。新しい生命を敏感に感じとる鋭さと、
小さなものを暖かく見つめる優しさに満ち満ちた美しい曲である。
混声合唱組曲『ひとりぼっちの夏』
組曲『ひとりぼっちの夏』は、28歳の若さで他界した立澤保彦氏の詩に、平野淳一氏が曲をつけ、1983
年、合唱曲として初演されました。
ここにえがかれた詩は、保彦氏が成城学園時代から書きつづけた詩と、病気と闘いながら書き綴った日記とで
構成された遺稿集「ひとりぼっちの夏」からとったもので、死を予感した一人の若者が残り少ない時間を精一杯
生きようとした、ひたむきな気持ちが、素直に表わされています。
『三つの聖歌』
ロッシーニ(Gioacchino Antonio Rossini 1792〜1868)は、歌劇「セビリアの理髪師」「ウィリアム・テル
」などで知られるイタリアの作曲家です。
『三つの聖歌(信仰・希望・愛 1844)』のテキストの元となるのは、聖書にあるコリント人への第一の
手紙の第13章です。この章には愛の奥義が語られており、愛の章といわれていますが、その終わりの言葉に「
いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つであり、このうちで最も大いなるものは愛である」と
あり、テキストは、この言葉の内容を具体的に言いあらわしています。各々個性的な3曲がよくまとまっており、
美しく豊かなメロディとふくらみのある和声で、小曲ながら、聖楽らしい大きさを感じさせる優れた作品です。